介護施設における研修は、「法定研修」と「任意研修」に大きく分けられます。それぞれに目的と対象、実施方法があり、施設の実情や人材育成の方針に応じて選択・設計されます。
法定研修(義務研修)
法律や厚生労働省の通知により、実施が義務付けられている研修です。
主な法定研修の種類(2025年時点)
研修名称 | 主な内容 | 対象者 | 根拠・通知 |
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認知症介護基礎研修 | 認知症の理解と基本的対応 | すべての介護職員(義務) | 令和6年4月施行の通知 |
虐待防止研修 | 虐待の予防・発見・対応 | 全職員 | 高齢者虐待防止法・厚労省通知 |
感染症対策研修 | 感染予防・標準予防策 | 全職員 | 感染対策ガイドライン |
身体拘束廃止研修 | 拘束の定義・代替手段 | 介護職員・看護師 | 老人福祉法指導指針 |
緊急時対応研修 | 災害・急変時の初期対応 | 管理職・夜勤者等 | 地域防災計画・自治体通知 |
施設種別ごとの実施義務(例)
施設種別 | 必須とされる研修 |
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特別養護老人ホーム | 認知症ケア、虐待防止、感染症対策など |
通所介護(デイ) | 緊急時対応、感染症対策 |
小規模多機能型 | 身体拘束廃止、認知症研修、災害対策 |
任意研修・スキルアップ研修
法定ではないものの、職員の成長や職場環境改善に寄与する研修です。
- 新人職員向けOJT研修
- サービスマナー・接遇研修
- リーダー職育成研修
- ハラスメント防止・コンプライアンス研修
- 多職種連携研修(医師・看護・リハビリ等との協働)
これらは職場ごとのニーズに応じて自由に組み合わせ可能であり、継続的なキャリア支援や人材定着に効果を発揮します。
研修の提供形式の比較
実施形式 | 特徴 | 向いている施設 | 注意点 |
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集合型研修(対面) | 実技指導に強い/即時質疑応答可 | 小規模/実技中心 | 日程調整が難しい |
オンライン研修(eラーニング) | 時間場所の自由/進捗管理が可能 | 中〜大規模施設/複数拠点 | ICT環境の整備が必要 |
ハイブリッド型 | 対面+事前オンライン学習の組合せ | 新人教育や更新研修 | 準備に手間がかかる場合あり |
職員階層別の研修設計
職員の階層に応じて、求められる研修も異なります。
- 一般職員:認知症、感染症、虐待防止などの基礎教育
- 中堅職員:OJTスキル、チームビルディング、記録の質向上
- 管理職:コンプライアンス、労務管理、危機対応、監査対応
このように階層別に研修を構築することで、施設全体の専門性と組織力が高まります。
研修を企画する際のポイント
- 年間計画としてスケジューリング
- 厚労省や自治体の指導事項を反映
- 記録・受講管理の方法を事前に確立
- 受講者の反応や効果測定(理解度確認テストなど)